[2005年04月12日]

早いものですね!前向きの変化と進化 (4・13・2005)

 風伯翁の「日めくり俳句」も102回を重ねています。今日(4月12日)の句の季題は「こぶし」、築15年になる石神井公園の家に植えた「こぶし」もいつしかかなりの大木となり、白い花を一杯つけるようになりました。風に吹かれて白い花どうしが寄りそい、触れ合い、大きな花弁が地に落ちるさまは、まさに加藤三七子が詠んだとおりのもので、桜とは一風変わった季節感があります。
 目白の学習院にも「こぶし」の巨木のあるのを覚えているでしょうか。今年は桜が遅く、「こぶし」といっしょになってしまいました。新学年の授業が始まったあとでも桜が見れる年はそれほど多くありません。今年は、そんな、それほど多くない年のうちのひとつのようです。
 こんな学習院大学にいまでも週2回から3回通っています。東1号館6階609号室が「政治学科前教授室」となっていて、現在4人の名誉教授が共用して�ます。郵便物、特に内外の学会誌はほとんど大学宛に届きますし、電話、ファックス、コピー機、PCなど、仕事に必要な機器が全部そろっているのと、長年の習慣(中等科のときから数えれば、ほぼ半世紀の通学と通勤)はなかなか切り捨てることができません。このほか、虎ノ門交差点の近くにある升本ビル4階に「原子力システム研究懇話会」(略して「システム懇」)があり、ここにも電話、ファックス、コピー機、PCなどがそろっているので、週1回は顔を出します。地理的に、都心で会議や会合があるときには何かにつけて便利です。というわけで、定年退職後も相変わらず西武池袋線の通勤定期のやっかいになっています。最近、「団塊の世代」のマス定年退職が社会問題としてテレビなどで取り上げられていますが、自分や友人のやっていることを見たり聞いたりして、人にはずいぶんいろんな生きざまがあるのだということを強く感じます。
 4月末の日本原子力学会春の年会では、「日本原子力学会フェロー」の称号(学会と社会に対する優れた貢献に対して与えられる称号)と「部会功績賞」をもらいました。社会科学者��は両方とも第1号だったそうです。先週は原子力委員会が主催する「アジア原子力協力フォーラム」が東京で開かれ、私も主催者側の一人として出席しました。インドネシアとベトナムは今後10年以内に原子力発電計画を実行に移すものと考えられています。中国の原子力発電計画は飛躍的に加速しつつあります。今度の会議で驚かされたのは、これまで自国の原子力発電には極めて消極的だった、ウラン輸出国オーストラリアが原子力発電計画を真剣に検討し始めたことです。
 原子力は、「エネルギー」の問題と「事故リスク」の問題と「核拡散」の問題が複雑な矛盾した関係を作りあげており、一国が一歩誤ると世界全体が「危機」に当面する公算が高いところが、石油や太陽エネルギーと大いにちがう点だと考えられています。国内では確かにいろいろ否定的な側面を指摘、糾弾されている原子力発電ですが、世界的視野からいうと、致命的事故を起こしておらず、核兵器をもつ野心ももたない日本が原子力発電の模範的優等生と見られているのも事実�す。
 私が社会心理学者の視野から「現代日本人の核意識」というテーマで「中央公論」に100枚巻頭論文を書き、「原子力の社会的受容」の議論を加えて「原子力社会学」という一冊の本に纏めたのは1982年のことでした。この本は同じ年に「エネルギーフォーラム賞優秀賞」を受賞しました。当時は、原子力を研究対象とする社会科学者はほとんどいませんでした。珍しかったから、「エネルギーフォーラム賞優秀賞」を受賞したのでしょう。20年経った今では、数はそれほど多くはありませんが、社会心理学、政治学、国際関係学、行政学、行政法、リスク科学などの視座から原子力を研究対象とする第一線の研究者が顕著に増えつつあります。原子力発電国が増えるということは、潜在的な各兵器国が増えるということでもあり、第2、第3のチェルノブイリが起こる公算も増えるということでもあります。負の価値を封じ込めるのが「制度」や「人間行動」であるという意味で、社会科学者もまた原子力に内在するリスクを封じ込めるための責任と職責を自覚し、率先して新しい研究分野の開拓に努めるべきだと思うのですが、ど��でしょうか。
 せんだって、今や第一線で活躍しているリスク研究の第一人者でもあり、屈指の社会心理学者でもある若い(50代の)友人から、1980年代にだされた「原子力の社会学」のなかで私が「核テロリズム」を取り上げ、「核不拡散の世界的レジーム」を提言しているのは時代を先取りしていて、すごいことだ、というお褒めの言葉をいただいた。しかし、私はあえて言いたい。時の経つのは早い。しかし、そこには前向きの変化、進化が着実に進む。あなた自身がまさにその証拠ではありませんか、と。

投稿者 m-staff : 2005年04月12日 23:39

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