[2008年07月29日]

水底へゆすら紅寄せ沈みけり

吉野義子

ゆすらが夏の季語。山桜桃、英桃(ゆすらうめ)も同意の季語です。
ゆすらうめは、中国が原産。庭木として親しまれていて、高さが2
~3メートルほど。春になると、葉に先立って白い五弁花を咲かせます。花のあとの実は梅雨の頃に赤く色づきます。大粒の実が枝にいっぱい熟れている様子はとてもよいものです。
時代小説作家・乙川優三郎に「ゆすらうめ」という作品があります。新潟県新発田生れの娼妓の話です。親兄弟の借金のために苦界に身を売る健気な娘おたかの物語。その冒頭は次のように始まります。「四囲を家の外壁と塀に塞がれ、ろくに陽の射さぬ裏庭に、桜にしてはか細い立木がひっそりと息づいていた。」
この句は、そのゆすらうめが、川の水底へ自ら沈んでゆく、枝から赤い実が落ちてゆく様を、くっきりと表現しています。
作者よしの・よしこの紹介は、2007年7月28日を参照。
(出典:「合本現代俳句歳時記」角川春樹事務所、2004年刊)

投稿者 m-staff : 2008年07月29日 06:12

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