[2011年03月09日]

春疾風屍は敢て出でゆくも

石田波郷(1913~69)

春疾風(はるはやて)が春の季語。春嵐、春突風、春烈風、春はやちなども同意語です。
春の強風のことです。季節風の変わり目で、乾燥した地面に強い南よりの風が吹き続けて部屋の中まで砂が吹き込んで口の中までざらざらになります。
この句は、1949(昭和24)年の作。作者は東京・清瀬の療養所に結核患者として入院をしていました。食糧も十分でなく化学療法も開発途上で毎日のように死者が出ていました。そのときの情景が句になっています。朝からの春疾風の中、「屍(かばね)」が敢て病棟を出て霊安室に向かっています。やがて自分もそのようになるかもしれないと案じつつ。
同じ作者に次の句があります。
春嵐鳴りとよもすも病家族   波郷
「とよ(響動)もす」とは、鳴り響かせること。春の嵐が大きな音を立てて吹き荒れていて、病人を抱えて途方に暮れている家族の悲しみが伝わってきます。
作者いしだ・はきょうの紹介は、2005年2月3日を参照。
(出典:平井照敏編「新歳時記」河出文庫、1989年刊)
・毎年のことですが、杉の花粉が飛んでくしゃみ、鼻水、眼がちかちかしています。

投稿者 m-staff : 2011年03月09日 10:11

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