[2021年12月04日]

冬ざれの猫の描きある杉戸かな

中村吉右衛門(1886~1954)

冬ざれが冬の季語。冬され、冬ざるるも同意の季語です。
風物が枯れはててもの淋しい情景になっている冬の姿をいいます。草木が枯れるだけでなく、海も山も、さらに建物もすべて荒れた姿を見せています。それらの風物と、その荒れ寂れようが進行している季節を指して言います。冬になる意味の「冬さる」を濁って発音すると「曝(ざ)る」(日光や風雨にさらされて、白ける)の意味がかぶさって、冬枯の物寂しい景色の形容になります。
この句では、冬ざれと、猫の姿を描いてある杉戸との取り合わせが面白い効果をもたらしていますね。
今日から人権週間。
作者なかむら・きちえもんの紹介は、2005年1月10日を参照。
(出典:角川書店編「合本 俳句歳時記第三版」、角川書店、2003年刊)
・本欄の初代中村吉右衛門の孫で二代目の中村吉右衛門は、11月28日心不全で亡くなりました。享年77歳。いい役者がまた一人幽明界を異にしましたね。

投稿者 m-staff : 2021年12月04日 10:23

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