[2022年03月31日]

吾子抱いてビール瓶下げ春過ぎる

榊原風伯

今日は3月7日に亡くなった4歳年上の義弟、詩人・清水哲男さんを偲んで追悼句を掲載します。
昭和50年頃、春の黄昏どき、中野のマンションから高円寺のアパートへ、いつものジーンズ姿で、左手に3歳の娘を抱いて、右手にはビール瓶を1本だけ下げて、ゆったり歩く男がいました。哲男さんの妻はピアノの教師、夕方になるとピアノのレッスンに子どもたちが大勢押しかけてきます。その間、義兄(私)の家で晩酌を楽しみます。3歳の女児は同じ年頃の義兄の息子たちとお遊びの時間です。
哲男さんと出会ってから57年、橋の下に水が流れるように、多くの春が過ぎて行きました。

清水哲男著「換気扇の下の小さな椅子で」(書肆山田、2018年刊)
目次=手、商店街、天眼鏡、ベッド、歌と歩行、新年、飛車角、探偵物語、八十歳、血と泥、懐しき雨降り、折り合い、梅雨明けの唄、酷暑抄、風景、秋へ、冒険ターザン。

「手」
日が昇る
校庭に
赤い手の子供たちが整列する

一粒の麦もし死なずばというお話
見上げると音楽室の窓から
タンクタンクローが小さく手を振っている
いつだって麦は頑固に畑で育ち
いつの日かおれたちは
麦畑のない町で死ぬだろう
背中いっぱいに日を受けて
赤い手を突き上げて
おれたちは校歌をうたう

校庭に立つ埃が今日も
赤い手を垂らしたおれたちを
放課後のつらい労働に巻き込んでいくだろう。

この詩集は、第26回(2019年度)丸山 薫賞を受賞しました。
・今日は、選抜高校野球の決勝戦、近江対大阪桐蔭の関西勢対決。優勝は大阪桐蔭でしょうね。プロ野球は開幕から広島とソフトバンクが5連勝。阪神と日本ハムは開幕5連敗。

投稿者 m-staff : 2022年03月31日 09:18

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