2020年02月12日

古傷がおのれ苛む木の芽どき

稲垣きくの(1906~87)

木の芽どき(時)が春の季語。芽立時、芽立前、木の芽雨、木の芽晴、木の芽山なども同意の季語です。
料理の上では「木の芽」といえば、山椒の芽を指し、地方によっては通草(あけび)の芽を指すところもあります。木の芽時は、特定の芽ではなく、すべての樹木がことごとく芽吹くことを言います。そこにはまたそれぞれに遅速があり、色合いを異にして風情をそえていますね。庭の芽立ちから、雑木林の様子まで、春は少しずつ姿を変えてゆきます。
この句では、木の芽時になると、作者は自分自身の古傷が苛(さい)なんでくると過去を振り返っています。
作者いながき・きくのの紹介は、2006年6月8日を参照。
(出典:平井照敏著「新歳時記」、河出書房新社、1989年刊)
・11日、野球の好きな人なら誰でも知っている、あの野村克也氏が84歳で亡くなりました。長嶋や王が向日葵なら俺は月見草、数々の名言とぼやき節を残して惜しまれつつ黄泉の国へ旅立ちました。悲しいですね。日本のプロ野球は、金田、野村と大事な人たちが世を去りました。面白い野球をありがとう。

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2020年02月11日

石のかどほのくれなゐに地虫いづ  

百合山羽公(1904~91)

地虫い(出)づが春の季語。地虫穴を出づ、地虫穴を出る、蟻穴を出づなども同意の季語です。
地虫とは、狭い意味での黄金虫、甲虫などの幼虫のこと。広義では、地中に棲む虫の総称で、爬虫類や両棲類まで含まれます。寒い間、地中に冬眠していた虫たちが春の暖かさに誘われて穴を出てくることを指していますね。
この句では、庭の石の間から、ちょっぴり紅をさしたような温かさの中で、地虫が顔をのぞかせた、と詠っています。
今日は、建国記念日。1872(明治5)年、神武天皇即位の日を設定して紀元節と呼びました。戦後は「建国記念の日」という名前で復活し今に至っています。
作者ゆりやま・うこうの紹介は、2005年12月17日を参照。
(出典:平井照敏編「季寄せ」NHK出版、2001年刊)
・第92回アカデミー賞で韓国の「パラサイト 半地下の家族」が作品賞をはじめ4冠。こんなこともあるんですね。新型コロナウイルスをめぐってWHOは、感染者の99%は中国国内だとする一方で、イギリスやフランスで、中国に渡航歴のない人から感染が広がっていると発表、警戒感をあらわにしています。

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2020年02月10日

春あさくえりまきをせぬえりあしよ

室生犀星(1889~1962)

春あさ(浅)くが春の季語。春浅し、浅き春、浅春(せんしゅん)も同意の季語です。
春浅しは、立春を過ぎてもしばらくの間は、冬と同じような寒さが残っており、いまだ自然の様子も春らしい感じが整っていない季節を言います。江戸期の歳時記には、季語として認められていませんでしたが、明治になって使われるようになりました。「早春」とほぼ同じ季節感を持っていますが、「浅し」と踏み込むことによって新しさが感じられますね。
この句では、春始めの寒さに、襟足に視点を置いて、マフラーをしなくては寒々しく見える、と詠っています。
作者むろう・さいせいの紹介は、2005年6月20日を参照。
(出典:角川春樹著「合本俳句歳時記」、角川春樹事務所、1998年刊)
・中国の保健当局は、新型肺炎の感染者が3062人増え、合わせて4万171人になったと発表。また死亡した人は97人増えて908人になりました。10日から企業活動が再開、感染拡大がどうなるか心配ですね。

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2020年02月09日

紅さして夕月はあり一の午

深見けん二

一の午が春の季語。初午、二の午、三の午、初午詣、
2月の最初の午の日の稲荷神社の祭礼のこと。全国の稲荷神社や稲荷の祠の祭礼。稲荷信仰はもともと田の神の信仰で、全国に行き渡っており、屋敷神や同族神も稲荷であることが多く見られます。京都の伏見稲荷、愛知県の豊川稲荷などが有名です。初午には、幟を立て、太鼓を打ち鳴らし、油揚げ、米の粉などをそなえます。稲荷は稲生(いなり)の意味で、農業の神、田の神であるとされ、田の神が狐を使者にするという信仰です。
この句では、一の午の夜に、夕月が紅をさして、出ていると詠っています。夕月が美しい女性のようですね。
作者ふかみ・けんじの紹介は、2005年3月31日を参照。
(出典:「新版・俳句歳時記(第二版)」、雄山閣、2003年刊)
・今日の横須賀は快晴、富士山がきれいに見えます。中国で新型肺炎の死者が811人、2003年のSARSの死者774人を上回りました。一方、クルーズ船では緊急性のある持病の薬など500人分を厚生労働省が緊急提供。戦いはまだまだ続きますね。

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2020年02月08日

百度石忘れられをり針供養

高木晴子(1915~2000)

針供養が春の季語。針祭、針祭る、針納、納め針、供養針なども同意の季語です。
針を休めて、折れた針のために供養する日。関東では2月8日、関西や九州では12月8日に行われます。その年に使って折れた針を淡島堂に納め、裁縫の上達を祈ります。淡島さまは、和歌山県加太町の淡島神社を本社として、各地に淡島堂という名前のお堂があります。東京では浅草寺境内にあるのがよく知られています。
この句の「百度石」は、社寺の境内にある百度参りの標識のこと、「百度参り」は、社、その境内の一定の距離を百回往復し、そのたびに拝礼をすること。これは、頼みごとをかなえてもらうために、同じところを幾度も通うことを意味します。
この句は、針供養に来ている人は、大事な百度石を忘れてお参りしている、と皮肉っています。
作者たかぎ・はるこの紹介は、2006年3月31日を参照。
(出典:「日本大歳時記」、講談社、1981年刊)
・連日、新型ウイルスでメディアは大騒ぎ。日本各地では、「マスク不足現象」。人々は、オイルショック時のトイレットペーパー不足現象と同じ心理状態なのでしょうね。ネットによるデマには気を付けましょう。

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2020年02月05日:白梅や墨芳しき鴻臚館
2020年01月28日:母懐ふ老の感傷初不動
2020年01月06日:神の燭仏の燭や松の内
2019年12月05日:犬猫と同じ姿や冬座敷
2019年11月23日:枯蔦や石の館の夜の雨
2019年06月19日:栗の花紙縒の如し雨雫
2019年04月10日:春暁や一点燈の大伽藍
2019年01月10日:堀川の水の暗さや宵戎
2019年01月01日:元日や上々吉の浅黄空
2018年12月31日:銭洗弁財天の師走かな
2018年12月25日:雪道や降誕祭の窓明り
2018年12月15日:柊の花に何喰む神の鷄
2018年10月30日:神に水仏に線香秋深む
2018年09月24日:名月や故郷遠き影法師
2018年07月14日:巴里祭厠に残る女の香
2018年05月09日:古溝や只一輪の杜若
2018年03月19日:剪定の腰手拭や一日晴
2018年02月18日:老梅の穢き迄に花多し
2017年10月26日:空山へ板一枚を荻の声
2017年06月16日:葛桜男心を人問はば